教育委員会制度は、以前からその形骸化が指摘され、活性化論と廃止・縮小論が展開されてきた。
教育委員会の廃止解体・縮小を真っ先に強く主張したのが、新自由主義経済改革を推進する社会経済生産性本部であった。同会は、1999年(平成11年)に、『教育改革に関する報告書―選択・責任・連帯の教育改革』を発表。その中で、小中学校と高校が市町村と都道府県という別レベルの教育委員会にゆだねられている意味が無いことや教育委員会が公選制でないために、文部行政の末端となっていること、更に、教育委員会の強大な権限と官僚的な組織が、学校の主体性の発揮を阻害していることなど、現行の教育委員会制度を厳しく批判し、社会教育・生涯学習部門の可能な限りの民間委託と学校教育に関する権限の校長への移管により、教育委員会の大幅な整理縮小を大胆に主張した。
さらに、全国のいわゆる改革派市長からは、後に記すように、教育委員会制度の廃止解体・縮小論が公然と強く打ち出された。地方六団体の一つである全国市長会は、2001年(平成13年)「学校教育と地域社会の連携強化に関する意見―分権型教育の推進と教育委員会の役割の見直し―」を出し、「文部科学省を頂点とする縦系列の中での地域の自主的な活動の弱さ、学校教育関係者以外との接触の希薄さに伴う閉鎖的な印象、市町村長との関係のあり方など」の問題を指摘した。そのうえで、検討課題としながらも、教育委員会の任意設置や市長と教育委員会の連携強化、首長と教育委員または教育長との日常的な意見交換を提言した。生涯教育分野に関しては、「縦割り型ではなく、多方面からの総合的な対応が望ましいこと、このような分野に関しては、教育の政治的中立性確保といった理由から特に教育委員会の所管とすべき強い事情があるとも考えられない」として市町村長の所管とすべきとしている。
実際、その2ヵ月後の2001年4月には、島根県出雲市において、首長部局の中に文化財、芸術文化、スポーツ、図書館などの社会教育・生涯学習分野を移管された。これにより、教育委員会事務局は、学校教育に特化される業務を担うこととなった。同様の動きは、愛知県高浜市、群馬県太田市など、他の市にも広がっている。いわば、教育委員会の解体ないし縮小は、事実上、進行しているといえる。
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地方分権を推進する国からも、声が挙がる。地方分権改革推進会議は、2004年(平成16年)に、「各地域の実情に応じて地方公共団体の判断で教育委員会制度を採らないという選択肢を認めるべき」と教育委員会の必置規制の弾力化を求める意見書を提出している。同会議は、「生涯学習・社会教育行政の一元化、幼保担当部局の一元化の観点から、地方公共団体がこれらの担当部局を自由に選択・調整できるようにすることが必要」とも述べ、地方分権時代の到来に備えた地方教育制度の新たな基盤整備の重要性を訴えている。(「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」―地方分権改革の一層の推進による自主・自立の地域社会をめざして―)
これを後押しする形で、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」が閣議決定され、その中では、「地域の創意工夫を活かし、学校の自由度を高めるため、平成16年度内を目途に教育委員会の改革と合わせ、教育内容等に関する校長の権限強化と学校の外部評価の拡充に向けた方針を示す」ことが明示された。
中井浩一は、「教育界全体にあっては、改革にもっとも熱心なのは文科省」で、「市町村教育委員会の独自性を押さえ込んでいるのは、都道府県教育委員会である」と指摘する。「その理由に挙げられるのが『全県一律』『教育の機会均等の原則』『地域格差をなくす』」というものである。